自分の考えを持つ
2023.07.06(木)「自分の考えを持つ」
音楽教育家 樹原涼子
「自分の考えを持つと、人生は面白くなる」という話をします。
私がピアノのレッスンのときに心がけているのは、「生徒が自分自身の演奏を聞いて、どこが良かった、惜しかったなどと自分で評価しながら良くしていく『手伝い』をする」ということです。「カウンセリングレッスン」と呼んでいます。
ある時、レッスンの演奏後に生徒に自己評価を問いかけると、「良かったのか悪かったのか自分ではわからない、先生が言って」と言います。私が「前の先生のところでは、そんなレッスンをしていたの?」と聞くと、「前は先生の言うとおりに弾けば、どんどんマルがもらえた。だから先生にも『こう弾いて』って言ってほしい」と答えました。
私は、「先生が思った通りに弾いても、うれしくないの。あなたが思ったように弾けるようお手伝いをするために、私はここにいるの」と言うと、「面倒くさい」と言うのです。
たかが曲だから「面倒くさい」で済むのかもしれませんが、それが人生だったらどうなるのか、と思いました。「先生や親の言ったとおりにしていれば楽かもしれないけれど、人間はいろいろなタイミングで大事なことを決めなきゃいけないの。例えば自分の好きなこと、勉強したいこと、行きたい学校、結婚、就職も、何か岐路に立った時に自分はこう考える、これがやりたいという強い気持ちがないと越えていけないことがいっぱいあるのよ。言われたとおりにするからどうでもいいというのは、良くないと思う」と伝えたのですが、生徒は面倒くさいという表情のままでした。
カウンセリングレッスンを重ね、その生徒は少しずつ自分らしい音楽を表現するようになっていきましたが、その後私は考えました。自らが主人公になって、音楽や物語が動いていくシチュエーションを作ってあげたら、子どもたちももっと音楽、そして人生を「我がこと」として、自分で考えて感じて決められるようになるのではないかと。
そこで、お話と音楽をセットにした組曲を作ることにしました。ピアノのレッスンの中にも物語を取り入れようと考えたわけです。
新しく手掛けた曲集の中にも、「主人公が迷う」「ドキドキしながらも一歩踏み出す」「恐怖に打ち勝つ」というような場面だったり、「思いがけないことが起こったときに自分がどんな対応をするか」ということを味わえる曲を作りました。実際の発表会では6人が1曲ずつリレーをする形で演奏したのですが、子どもたちはお話を読んで、その気持ちになってピアノに向かい、まさに主人公の心の音で奏でることができるようになったのです。
一人の演奏が終わったら、よく聴いていた次の子が受け取って次のお話の気持ちで演奏をして、見事なリレーが繋がって大拍手でした。みんなが協力し合い、一曲ずつに責任を持ってとても胸を張って演奏することができ、そのときの子供たちは、それまで見たことのないような誇らしい表情をしていました。そういう達成感を味わえる、自分ががんばって表現したことで誰かに何かが伝わって手ごたえを感じることができたというのは、とても大きいことではないでしょうか。
これからも、子どもたちのために物語や音楽をたくさん作っていきたいと思っています。
※ テレビ静岡テレビ寺子屋より引用
誰かと力を合わせる
2023.07.06(木)「誰かと力を合わせる」
音楽教育家 樹原涼子
私が手掛けた教則本「ピアノランド」は、ピアノを好きになってもらいたい、その喜びを分かち合ってもらいたいと、歌と伴奏が付いた「連弾」の形でスタートします。
ピアノを一人で弾いていると、自分の都合だけで弾いてしまいがちです。例えば、「ド」を弾いて「えっと次は…」というように、考えながら探り弾きのように弾いていくと、音楽にはならないですね。けれど、伴奏が入り、テンポやハーモニーが付いて、そこにメロディをのせていくと、子どもは「ここで弾けばいいんだ」と、安心感がある上で演奏することができます。幼い頃は、先生が伴奏してくれることによって自信を持って演奏をスタートできる。そして上手になっていったあとで、だんだん先生が手を放して独り立ちしていく。そういう過程をイメージして連弾でスタートしたわけです。
一緒に作業をする連弾が、いかに大切かと感じたエピソードがあります。
私の教室に転入してきたある生徒は、それまで人と合わせて演奏した経験がありませんでした。私が「伴奏してあげるね」と始めると、自分だけでとっととっとと弾いてしまい、まったく息が合わないのです。原因を探ってみたら、彼女は「音楽を聴いていない」ということが分かりました。不思議ですよね。ピアノを弾いているのに音楽を聴いていないって。自分の都合しか考えていないのです。
「これは、ピアノだけではない」と思い、練習の仕方を考えました。「この曲の伴奏を弾くから良く聴いていてね」、と私が弾きながらメロディを歌います。すると、「へえ、こんなにきれいな伴奏が付いているんだね」と彼女がつぶやきました。
「覚えてみて」と言って、伴奏を何回も弾きました。すると、音楽の構造や全体をやっと聴いて理解し、自分はここで出るんだということが分かって、弾き始めることができ、少しずつ合わせられるようになってきました。
音楽は、一定のテンポで流れていきます。だから、「えーっと」と思っていると、先生は待たないでどんどん先に行くのです。すると、「音楽は進んでいる」と思い、そのテンポに追いついて自分から入っていくことを覚え始めました。
こうやって彼女は、演奏を人と合わせることができるようになってきたわけですが、そのときに、弾くこと、弾かせることばかりにみな一生懸命になっているけれど、いかに「聴く」ことが大事かということを思い知らされました。
これは人との話でも一緒ですよね。誰かと何かをする時には、相手が何を求めているのか、どうしたいのかを聞いて、理解してこそ、一緒に力を合わせて何かを作り上げることができるわけです。
連弾を極めた子どもたちというのは、自分の音以上に相手の音を聴いています。そのことによって音楽がどんどん良くなって、二人で音楽の旅をしているという感じになるので、聴いている人もぐいぐい引き込まれていきます。
音楽のレッスンは、自分の心が動くように、そして、相手の心を感じるように、そして、一緒に心を動かせるように。そういうことを心がけてレッスンしていくのが良いですし、これは人生にも絶対に生きてくる、と考えています。
※ テレビ静岡、テレビ寺子屋より引用
新中学一年生からのハガキ
2023.07.03(月)
この4月から中学生になった
男の子と女の子から、
幼稚園にハガキが届きました。
ハガキ、ありがとう。
勉強にスポーツに思いっきり力を
発揮してください。